君がすき
「たしかに。空手部の先生、厳しいもんね」
「だよね~。まぁ、俺もそろそろ戻らないと怪しまれるかな」
そう言うと松下くんは、壁に預けていた身体を起こす。
すると不意に、ジッと見つめられた。
「俺、時々思うんだけど。工藤さんて、優しすぎるよね」
「え?」
「イズヤンと早瀬っちとずっと一緒でしょ?あの二人、しょっちゅうケンカするし。俺は見てるだけだから楽しいけどね」
二人のことを思い出しながら話しているのか、松下くんはクスクスと笑みを浮かべる。
そんな松下くんを真っ直ぐ見つめながら、私はそっと口を開いた。
「……それが、二人のいいところだよ」
うまく、笑えたかは、わからないけれど。