君がすき
「なんで二人とも、そろって数学がダメなの?」
夢榎の言葉に、あたしと久富は顔を合わせる。
「だって、文系なのに数学がある意味がわからない」
「数学が無理だから、俺、文系選んだのに」
「ね?」「な?」ともう一度顔を合わせて頷けば、呆れたように夢榎がため息をつく。
大体、公式を覚えたとしても、その公式を使うまでに発想が追いつかないし。
計算だって、ややこしくて間違える。
でも、内部進学で進むためには、一定以上の成績がないといけない。
だから、成績を落とすわけにはいかないんだけど。
「受験生って、やだなぁ……部活したい」
机に突っ伏しながら外を見れば、いつの間にか雨が降り出している。
まるで、今のあたしの心境を表しているかのように。