君がすき
「つべこべ言わないの。他の受験生はもっと大変なんだから」
ピシャリと言い放つ夢榎に、あたしと久富は渋々プリントをやり始める。
たしかに、あたし達は受験生としては、まだまだ楽な方なんだよね。
夢榎とかは国公立目指してるんだし…。
そう思うと、学校のテスト勉強に夢榎をつき合わせていることが申し訳なく感じる。
そういえば、なんで夢榎って国公立目指してるんだろ…?
二年の最後らへんまでは、一緒に内部進学選んでた気がするんだけど…。
数学の問題が行き詰ったと同時に、ふと顔を上げて、難しそうな問題集をやっている夢榎を見つめる。
賢いと、やっぱり上の大学を目指すものなのかな?
本当は、一緒の大学がよかったんだけどなぁ……。
夢榎から“国公立受けることにした”と聞いたときは、ちょっとショックだった。
中学から一緒で、高校も大学附属を選んで、ずっと一緒だと思ってたから。
大学も離れているから、会える機会もきっと減る。
あと、一年もないんだよね…。
そう思うと、なんか寂しいな……。