君がすき
「これ、空手部の顧問の先生から。“アイツは賞を獲りすぎるせいで表彰されるありがたみがわかってない!”って言われてたわよ」
「ん?あぁ、この間の大会のやつか」
久富は夢榎から紙を受け取ると、スルスルと紙…もとい、賞状を広げていく。
久富はただでさえ強豪と言われるウチの空手部の中でも、一番強い。
そのため、よく表彰されてたりして、今回も“1位”と書かれた賞状を手に、普段と変わらぬ顔で、それを見つめている。
「ありがたみって言われてもなぁ…俺、空手が好きなだけだし」
そうだ。
久富は、本当に空手が好きで、勝ち負けには特にこだわっていない。
自分が強いか、弱いか。
それが一番で、勝ったからといって威張るわけでもなく、負けた相手には尊敬の意を示す。
あたしは空手のことなんてよくわからないけど、真剣に練習してる久富を知っているから。
その点では、すごいなぁって思う。
だからといって、チビ子って言うのが許されるわけないんだけど。
そんなことを思いながら二人のやりとりを聞いていると、次はあたしの方に夢榎が振り向く。
それに「ん?」と首を傾げると、夢榎はジーッと、あたしの口元を見つめて。