腹黒王子と意地っぱりガールの場合。
「愛してるよ、マイスイートハニー」



ちゅっ。

そんなリップノイズをたてながら、彼のくちびるがあかりの右手の甲に触れた。

とたん、教室のあちこちから『きゃあぁぁぁぁッ!!』と悲鳴にも似た声が沸き起こる。



「ほっ、本物の王子がここにいる……!!」

「仲が良いと思ってたら、やっぱりふたりはそういう関係なの?!」


「………」



まわりの女子生徒たちの黄色い声も耳に入らず、あかりはたった今起きた出来事に、頭がフリーズしていた。

しかし数秒後、ぼんっと一瞬で、今度は顔が真っ赤に染まる。



「なっ、なななななてめー何しやが……っ!!」

「なんだよ今更これくらい。毎晩もっとすごいことしてるくせに」

「おまえ頼むから口開くな!!」



隼人の言葉でさらに騒がしくなる周囲に負けない声で、あかりが真っ赤な顔のまま力いっぱい叫ぶ。

そして「気分が悪いので保健室に行く」と言って、人波をかき分けて教室の出入口へと向かった。



「付いて行こうか? 子猫ちゃん」

「おまえは病院に行け!!」
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