腹黒王子と意地っぱりガールの場合。
失敬な。この『胡散臭い笑い方』に、今まで何人の女子が目をハートにしてきたことか。

棚に背を寄り掛からせて腕を組みながら、オレは改めて、彼女へと視線を向ける。



「ではあかりチャン。その直球で唐突な質問の真意は?」

「し、真意って、いうか……」



そう言ってもじもじ、彼女はうつむいて視線をさまよわせ始めた。

しばらく彼女の、めずらしいそんな様子を眺めていると。

意を決したように、あかりは顔をあげた。



「だ、だって友達が、ファーストキスはレモン味、なんて話題で盛り上がってるから……だから実際は、ど、どうなのかなって」

「……あー……」



なるほど。実にそれは明快で、そして陳腐な話題だ。

彼女は恋愛経験に乏しく、なおかつウブでジュンジョーなためちょっとでも男女のアレコレに関する刺激的な話を聞くと、顔を真っ赤にさせてとてもイイ反応をしてくれる。

そしてそれが災いし、オレを含めた一部の人間にわざとそういった話を振られて混乱させられることも少なくない彼女は、どうやら今回もその類の被害にあったらしい。

まったく誰だ、そんなことをしたのは。後で「グッジョブ」とほめておかなければ。
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