腹黒王子と意地っぱりガールの場合。
「べっ別に、見たくて見たんじゃない!!」

「ふ~ん?」



そう言いながらアイツ、もとい生徒会書記の大鷲 隼人は、こちらに向かって歩いてきた。

目の前に来た隼人を、彼女は思いきり呆れたような表情で見上げる。



「ま~た、断ったんだ?」

「まーな。『ごめんね、今誰とも付き合う気ないんだ』ってさわやかに言ったら、『そっか、わかった』って言って去って行った」



飄々とした顔でそう言う彼に、あかりはじっとりとした視線を向けた。



「うさんくさ……」

「何言ってんだ。オレは60%のさわやかさと40%の優しさでできてるからな」

「うそつけ!! おまえは90%の加虐心と10%の嫌みたらしさでできてるんだよ!!」



そうまくし立てると、彼女はさっさと校舎に入ろうと歩きだした。

隼人は、のんびりとした歩調でそれを追いかける。



「……ついてこないでよ」

「教室が同じなんだから仕方ねーだろ」



あかりは早足で隼人はゆっくり歩いているが、歩幅の違いでふたりはほぼ同じ間隔を保ったままだ。

そんななかふと、彼が口を開く。



「なんか、あかりの後ろ姿見てると……」

「は?」

「背中に【私はバカです】って書いた紙を貼りたくなるな」

「しね!!」



──ほんとに、なんでこんなやつがモテるんだろうと思う。

こんなん、ただのサディストじゃないか。

そう考えながら、あかりは今までの隼人とのことを思い出していた。
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