腹黒王子と意地っぱりガールの場合。
例その1、教室で。


あかりが友達と机をくっつけてお弁当を食べていたとき、隼人が彼女の横を通った。



「もーらい」

「ああッ!! ちょっそれあたしが最後に食べようと思ってとっておいたイチゴ!!」

「うん、知ってて食べた」

「いかにもさわやかそうに笑ってんじゃねー!!」



ちなみに、隼人のその笑顔を見て他の教室内の女子はメロメロ。



例その2、生徒会室で。


「やーッ!! いいい伊梨亜助けてー!!」

「ちょっと、あかり落ち着いて……」



完全にパニクった様子のあかりと、それを宥める同学年で副会長の高宮 伊梨亜。

すると生徒会室のドアが、ガチャリと外側から開かれた。



「あ、会長。この際20分の遅刻は水に流しますからアレどうにかしてください」

「は? ……蜘蛛?」



現れた生徒会長の暁 甲斐に、伊梨亜が抑揚なく言う。

そのときずっと黙ったままそばで見ていた隼人が、口を開いた。



「大丈夫だってあかり。あんなんが人を襲ったりしないから」

「って言いつつてめー口もと笑ってんじゃねーか!!」




──うわ、やっぱこいつはただのサディストだ。

他にもいろいろと因縁はあるけれど……そう思いつつ、ちらりと右側の席を見る。

そこには、だるそうに頬杖をついて黒板に目を向ける隼人の姿。

実はふたりは、同じクラスなうえに席もとなり同士だ。
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