腹黒王子と意地っぱりガールの場合。
それから1週間後の放課後。

教室掃除のゴミ捨てじゃんけんに負けたあかりが、焼却炉にゴミ袋を持って行こうと校舎脇を歩いていると──。



「……のこと……すきで……きあって……い」

「(……まさか)」



焼却炉の方向から聞こえてきた声に、こっそり校舎の角から顔を覗かせる。

そこには、やはり予想通りに隼人と知らない女の子の姿があった。



「(……またかい……)」



己れのタイミングの悪さに、若干あかりはうんざりしてしまう。

しかも今回は隼人がこちらに体を向けていて、あかりが顔を覗かせてすぐに、バッチリ目が合ってしまった。

どくん、と心臓が大きくはねたような気がする。



「(やっ、やば……っ!)」



そう思って、あかりが慌てて顔を引っ込めようとすると。

目が合ったまま、にやりと隼人の口元が笑ったような気がした。



「(え……?)」



そして動けずにいるあかりが見ている前で、隼人は女の子の頭を引き寄せ──耳元で何かささやく。

その光景に、再びどくんと心臓がはねた。

どさりと音をたてて、しっかり握っていたはずのゴミ袋が地面に落ちる。

なぜか唐突に、1週間前の大和の言葉を思い出した。



《──はたから見れば付き合ってるようにしか見えないけど》
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