10年後のタイムカプセル
(でも、一番嫌なのは、友人を疑って泣かせてしまった、醜い私の心だ)
「私、私、どうしよう。美加にひどいことしてしまった。私最低な人間だ」ワンワンと溢れる涙は流れ、涸れることはない。拓也は静かに私が泣き止むまで抱きしめてくれた。
 タイムカプセルを埋めた10年前のあの日。拓也が持ってきた新品の桃色のシャーペンを見たとき、美加が選んでくれたプレゼントだったと確信した。私は美加から借りっぱなしだった文庫本を入れた。
 いつか、10年後、美加に返せるようにと祈りをこめて。
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