龍の花――龍希――
「――っ」
背後から聞こえるのは啜り泣きとも思える喘ぎ
何かを願い…
その何かに裏切られ…
しかしまだそれを望んでいる…
あぁ、この子は一緒なんだ
オレと
だからこそこんなにもこの子といるのが嫌なんだ
自分の地獄を見るようで
本部の小さなベッドに彼を寝かしつけ、SNAKEには雲雀と孔雀をソファに下ろしてもらう
そこでSHARKがやって来た
「Master」
その真剣味を帯びた瞳で見詰められれば
良くないことがわかったんだと理解できる
ただならぬ雰囲気を感じ取ったのかSNAKEが真面目な顔をして近くに寄ってきた
「彼の名前は―――百敷琥亜」
『…っ百敷だとっ』
「はい」
百敷と言えば天高くまで上ると言われるほどの収益を持つ日本一財閥
オレの嫌いな人種
少しの間を置いてSHARKは再び語り出す
つい先程百敷財閥総帥が何者かによって暗殺されたコト
父子家庭だったコト
総帥の息子が行方不明なコト
侍従が全力で捜索に当たっているコト
途中から話にTWINSも加わった
これからどうするのか
彼をこのままにしてはいけない
そんなことを討論していた
「キミ逹に迷惑はかけないよ」
不意に聞こえたその声に四人は驚きを隠さない
気配をほぼ完全に消していたからか
「あれ、兄さん驚かないの?
あ、気付いてた?」
『あぁ』
琥亜が近付きオレに触ろうとすると四人の殺気が空気を纏め上げ、琥亜の動きがピクリと止まった
「あぁあ、もー止めてよね
そんな殺気を放ったところでオレに勝てるわけねぇんだから」
小さい琥亜から発せられる四人を圧倒するほどの殺気
琥亜を怖く感じた
――この子は何でこんなにも地獄を知っている目をしている?
――オレと似た者同士なのか?
――だとしたら一緒にはいれないんじゃないか?
『琥亜、止めてあげろ』
琥亜の名前を言った瞬間に揺らいだ空間
動揺が表れに表れている
「どうして…オレの名前…
知って…んだ?」
そう言いつつ指先を恐怖で震わせる様は
先程とは異なる年相応の少年
「お前ら…暗殺者か?」
『あぁ、影龍…シャドードラゴン―の方が有名?』
それなり仕事はしたから名は売れてるだろう
「え…お前らが影龍?
だって影龍は引き受けた仕事は100パー成功させる凄腕…って」
『だから、オレら』
「…ガキじゃん」
「「「あ゙?」」」
『止めろSNAKE、TWINS
どっちにしたってTWINSよりは年上だろ?
ってか琥亜…お前10歳って本当か?』
SNAKEはナゼか勝ち誇った顔をし
TWINSは泣きそうな顔になる
「あぁ
どうせ7歳くれぇに見えたとかだろ?」
『「「「「…(図星)」」」」』
TWINSよりちょい大きい位かと思った
『オレと…同い年――』
「は?
やっぱりガキじゃん」
『オレらの本気…いや、オレの本気
知りたい?』
「え?そこオレらで良くね?」
SNAKEの声にSHARKから拳骨が落ちた
「あぁ、高が知れてるけどな」
その言葉は最後まで言い切れたかどうか
オレから発せられる圧力にその場の誰もが息を出来なくなったらしい