50音恋愛
【に】
*逃げんなよ*
3年前に別れた彼と同じクラスになった私は
彼と極力合わないように、避け続けていた。
別れ方は、自然消滅。
付き合っていることが周りにバレてしまい、からかわれて
「こんな奴と付き合ってるわけねぇだろ」
彼が返した言葉はこれだった。
それからずっと、彼を避け続けてきたのに
クラスが一緒になってしまうなんて
本当についてない。
そう、この日もついていない日だった。
教室で眠ってしまった私は、誰もいなくなった教室で慌てて帰る準備をした。
すると、
ガラガラー
入ってきたのは彼で、教室に私たち2人きりになった。
早く出なきゃ。
そう思って、急いで教室を出ようとすると
ぐいっ、と後ろに引かれる。
「きゃ……!」
気付けば彼の胸の中にいて
「逃げんなよ。」
彼はそう言った。
「いや、離して!」
「頼むから、逃げないでくれよ……っ」
絞り出すように言う彼の声を聞いて抵抗をやめると
「あの時はごめん。
お前のことあの時からずっと、好きなんだ……」
その言葉とともに、ドキドキと音をたてる様子を見て気が付いた。
ああ……、私も彼のこと、
あの時ずっとから好きだったんだ。