女神の纏足


「ちが、」


「嘘はいいっ。私には誰もいない、誰も…」
 

私の言葉を遮り、顔を手で覆い震える彼女


その姿に、最初に見た悲痛な顔を思い出す




そんなとき聞こえてきた、


「も、やだっ。一人にしないでよぉ。父様以外、モネには居ないのにっ…」



独り言のように呟かれた苦しいそれ
  


聞こえてきた瞬間、思わずぎゅっと抱きしめた



「なっ」


手の中でもがく彼女を抵抗できないくらい強く抱きしめる



「ごめんっ、剣を抜いたりしてごめんっ。」



ずっと、一人で寂しかったのかもしれない

やっと見つけた信頼できる者だったのかもしれない


「ッ」


「上辺だけじゃない」


さっきの行為は、マリア様にとって紛れもない裏切り行為だったんだ


「う、」


「泣いていいから」


「ぅ、あっ」


声を殺して泣きじゃくる彼女を静かに撫でてやる


ごめん、ごめんとと呟きながら…



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