女神の纏足
「この水に映し出されるんだ。」
「記憶の全部、ですか…?」
「違う違う。わしが選んで再生する、という感じだな。」
「選ぶ?」
「見たいのは生まれたころの記憶。じゃからここに移るのはそうだな、幼いころ周辺の記憶だろうな。」
「…それならば、はい。お願いします。」
「ほほほ、よし。では甕の縁に触れなさい。」
私は言われた通りに甕に触れる。
ラウ様は黙って事の成り行きを見ていた。
円の外で紡がれる呪文は何を言ってるかさっぱりだった。
けれど床に書かれた魔法陣が光を放ち、それと伴うように熱くなっていく甕。
そして朦朧とし始める意識。
「あつ…いっ。」
体中が熱い。
特に頭から甕に触れる腕にかけて。
「これか…。」
私にとっては何十分にも感じた時間だったが、呪文が終わりベル様がそう口にしたのはほんの数分のことだった。