女神の纏足
髪をあげた燕尾服姿にすらときめくことを忘れる。
こわばる頬の筋肉は笑顔を作ることができない。
ああ、馬鹿だな。
こんな当たり前のこと、なんで今まで気づかなかったのかしら。
馬鹿な自分に、ただただ泣きそうになる。
「マリア?」
ユルに優しく呼び戻されて意識をなんとかこちらに向ける。
「あ、っと。初めまして。マリアと申します。」
笑顔がひきつっているのが分かる。
でも、分かっていてもどうすることもできない。
「兄さん?」
「ん?ああ紹介するよ。こちらがレヴィアタン家の当主になるマリア。そしてこっちがアラストル家のアリスだ。」
そういってさっきまで抱いていたアリス様の肩を自然に開放するユニ様。
…今、アリス様の顔が引きつりましたよ。
いや、私の顔もひきつってるけど。