女神の纏足
「はい。」
手を取り舞台の中央へ舞い戻る。
突き刺さる視線の中、ダンスを始めるとユルが耳元で囁く。
「後で泣かしてやる。もうちょっと頑張れ。」
そんな励ましの言葉に思いがけずに涙がにじんでくる。
ここまで来る途中に見えてしまった踊る二人の姿が目に焼き付いて離れない。
流れそうになった涙を隠すようにユルの胸に顔を押し付ける。
クスクス、と上から降ってくる笑いは無視。
こうしていれば見たくないものも見えないのに…
それを見ていたお嬢様たちが怒りに狂っていたのは言うまでもない。
そしてユルが、優しい瞳で私を見つめていたことを私はまだ知らない。
ただ、このとき。
一瞬赤く染まった瞳があったことに気づいた人は何人いたのだろうか。
少なくとも、向かい合うアリスは見てしまった。
赤く燃える、嫉妬の炎。