女神の纏足



「…ああ、」


兄さんはこの場で頷く以外の選択肢を持っていない。

なにより兄さんがアリス様を拒否することはないんだろうが。



でもやっぱり、マリアは可哀想だ。


「僕と帰ろうか。」


震える肩に手を添える。




「…ユル。」


こちらを振り返ったマリアの瞳には今にも溢れそうな涙。


見ているこっちが苦しくなる。




「もうちょっと我慢。」


「…うん。」


縋るように燕尾服の裾をマリアが握った途端、


「っ」

刺さるような視線にマリアが固まる。


きっとマリアはこの金縛りの正体に気づいてない。

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