女神の纏足
ユルの目が見開かれる。
目の前のユルの頭が覚醒していくのが分かる。
「あー。」
そう無気力に項垂れたユルだがなぜか起き上がろうともしない。
何を考えているのか、その表情は落ち着いている。
「な、なんか落ち着いてるけど、大丈夫なの?」
自分でもよくわからないけど”すっぽかしちゃいけないタイミング”だった気がした。
何を考えているのかユルからは焦りを感じない。
ユルの表情を見ていると私の考えすぎだったのかと思えてくる。
考えれば二人は兄弟なのだから、約束を一つや二つすっぽかしたところでどうってことはないのかもしれない。
私だってお父様との約束を何度も破ったことはあるけれど、少し怒れば許してくれた。
でも何だろう、この言いようのない胸の騒めきは。
「やらかしたね。きっと兄さん目を真っ赤にして怒ってるよ。」
”目を真っ赤に”
血よりも濃いあの真紅の瞳を思い出す。
あの美しく見ただけで戦慄する瞳。
比喩にしても恐ろしい