塩味の恋
それにしても、駅までの道、微妙な坂なんだよね。
万年文化部の私は10分坂を上り続けるのが若干嫌で。
「駅遠いー、」
「俺部活でいつも走り回ってるから余裕ー」
ビュンビュンとうちわを振り回しながら日向は笑った。
やっぱ体力ないのダメだよね。
体力測定の持久走もいっつもドベちん。
恥ずかしくて途中で転びたくなるもん。
「たぶん結衣おんぶしてもいけるよ、」
ドヤ顔で言われた。
「や、遠慮しとく。」
軽く笑いながら日向は拗ねたフリをしてた。
そいえば今思い出したけど、
一週間後のお祭り、一緒に行けるんだよね。
思い出して楽しみになってきた。
「結衣、ここまで定期通ってる?」
そういって日向が指差したのは、私の家の最寄り駅の場所。
「ここ私の地元。」
「えっまじ?都会に住んでんのか。」
「駅の近くだけだよ。」
私の家は、普通の住宅街にある、普通の家。
ほんとに普通の木造二階建て。
ちなみに、階段の電気がちょっと可愛くて気に入ってたりする。