塩味の恋
しばらく無言で見つめあっていると、日向は急に笑い出した。
「ふはっ、あんま見ないでよ、照れるじゃん。」
「ご、ごめん…」
何少女漫画の主人公みたいなことしてんだか。
まつ毛みてたら見とれてました、とか。
「飲も!…ん?これって食べるっていうのかな?」
「えっ、わかんない…けど、ストローだから飲む?かな?」
そんな会話を交わして、ストローに口をつける。
甘くて、冷たくて、少し苦い。
ざわざわと様々な声が混じる店内で、意味のない会話を交わす。
きっとここにいる人のほとんどがそうなんだろう。
でも、やっぱ、日向が他の女の子とこういう時間を過ごしてたら、嫌だ。
付き合ってもいないのに、こんなことを考えて、
勝手に妄想して、自分の妄想に嫉妬して、
恋って、難しい。
私って、めんどくさい。
日向のこんな些細な時間を、全部じゃなくていいから、私だけのものにしたい。
日向の時間はものじゃないけど。
友達の沙耶だって、彼氏に対して、そんな風に考えるのかな?
あんまり恋バナとか、したことないからわかんないけど、
恋すると、こんな風になるのかな?
告白したら、こんな時間を過ごせなくなっちゃうのかな、って考えると、
なんだか少し怖くなった。