塩味の恋
取り柄のない私
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「ほんとありがとね、結衣。」
帰り道、家の近くの道路を二人で歩いた。
やっぱり二人の間には、かばん分の距離。
「んーん、こちらこそ、いろいろとごちそうさまでした。」
歩く速度が、自然と落ちる。
…帰りたくない。
「家、もうすぐ?」
「うん、あとちょっと。」
「駅から近いんだね。」
「うん。」
もっと話したいんだけど、自然と言葉に詰まる。
別に無言が気まずいとかそんなんじゃないけど。
「疲れた?」
歩くのをやめて、日向が私の顔を覗き込んできた。
「んーん、疲れてない。」
「……、」
帰り道はいつも足が重たい。
誰かと一緒の帰り道は久しぶり。
しかもその相手が日向だったら、さらに足は重たくなる。
でも、今、日向を困らせているんだってことはわかる。
日向のことを好きだ、ってことを差し引いても、帰りたくない。
でも、高校で知り合ったばっかりの日向に、そんなこと、言えない。