塩味の恋
「あの…、日向、もうちょっと一緒にいてくれないかな?」
勇気を振り絞って声を出すと、日向は一瞬固まった後、ゆっくり頷いた。
私の家のそばの公園に行き、二人でベンチに座る。
小学生がグラウンドでサッカーをしている。
木陰から、漏れる光が眩しくて、目がくらみそう。
「……、」
私から誘ったくせに、なにもしゃべれなかった。
「…家で何かあった?」
私の方に視線を向け、、また正面ななめ下に視線を戻し、日向は言った。
汗がジワリとにじんで、気分が重たくなる。
「んーと、家に帰りたくないなーって。」
へへっと笑いながら言う。
けど、日向は笑わない。
私と視線を合わせたまま、私のおでこに手を当てた。
「汗、」
「やめてよ。」
軽く日向の手を払うと、その手が戻ってきてデコピンされた。
「痛い。」
「うん、知ってる。」
軽く手が触れて、ごめん、と少し離れる。
かばん分と、恥ずかしさ分の距離。
…あーあ、せっかく今日すごく楽しかったのに。
帰りにこんな重たい空気にしちゃって、台無しじゃん。
私のバカ。