塩味の恋
「沙耶ー、彼氏さん。」
扉の近くでそう叫ぶ声。
そっちを見れば沙耶の彼氏が手を振っている。
「あ!悠斗!」
周りにハートを飛ばしながら沙耶は扉に駆け寄っていく。
いいなぁ、彼氏。
別に特別なことがしたいわけじゃない。
昼休みに一緒にご飯食べたり、
手をつないで一緒に帰ったり、
時々どこかでデートしたり、
普通の高校生の恋人同士のようなことがしたいだけ。
「いいなぁ…、」
思わずこぼれた言葉。
日向は目をぱちくりさせた後、にやーっと笑った。
大和は真顔のまま。
「まーそのうち結衣にも彼氏できるっしょ。」
口角を少しあげたままの顔で日向が言った。
私は、あなたとそうなりたいんですけどねー…。
「だといーけど。」
眉毛をさげて私は返事をする。
沙耶のほうをちらっと見れば、楽しそうな顔。
やっぱ、彼氏がいるのって、楽しいのかな?
片思いは、そんなにしたことないから、ちょっとつらい。