塩味の恋
「やっぱ短縮授業いいよなー。」
今は夏休み前の貴重な短縮期間中。
夏休みの宿題の量が膨大すぎて、今からやらないと終わらないかも。
「ね、すっごい暑いけど。」
パタパタと手で首あたりを仰いでみたけど、全然涼しくなかった。
自然と駅の方に歩く私たち。
やっぱこのまま帰るのか、って、ちょっと残念に思った。
「ね、結衣さ、この後暇?」
鞄からうちわを取り出しながら、唐突に日向が言った。
「えっ、」
思わず間抜けな声が出た。
でも日向は構わず、そのうちわで私を仰ぎながら言う。
「暇だったらちょっと付き合ってほしいんだけどさ。」
「ひ、暇だよ!」
即答で私は答えた。
うちわを動かす日向の手が一瞬止まり、そして微笑んだ。
「よかった、じゃあ行こ。」
「ん、」
車がとめどなく通り過ぎて行く大通りの道を、二人でゆっくり歩いた。
学校の最寄り駅まで、歩いて10分ぐらい。
その道を、同じ学校の人たちが何人か歩いている。
先輩なのか、同い年なのか、
全然知らない人ばかりで、学校って広いなって思った。