白いジャージとオレンジジュース
「今が幸せなんだからそれでいいんだってば」
たっくんが俺の腰に手を回してニヤつく。
「そうだよな。ありがとう」
過去は変えることができない。
俺達にとってあの時間はかけがえのないものだったし、素晴らしい宝物でもある。
だけど、引っかかるのも確かで。
時間が経てば経つほど、他に違う愛し方があったんじゃないか、と悩むこともある。
大和と斉藤先生の問題と向き合うことで、自分自身の過去とも向き合うこととなった。
スリルを楽しんでいた大和達を理解できなかった俺だけど、俺がしていたことだって、他人から見ればそう見えるのかもしれない。
音楽室の鍵を閉めて、さ。
「先生~!鍵閉めちゃったぁ~」
満面の笑みで直がそう言った。
ベランダの窓の鍵を閉めたらしい。
その笑顔を見ていると、やっぱりあの音楽室での時間も宝物なんだと思う。
「開けてくれ~!」
男3人で窓を叩いていると、空が嬉しそうに笑っていた。