白いジャージとオレンジジュース
「お母さんが入院したんだ」
徳田は綺麗に塗られた自分の爪をじっと見つめながら静かに言った。
「病気?」
「ううん」
しばらくの沈黙の後、静かに話し始めた。
「お父さんが暴力ふるってさ。とうとう入院だよ。でも、これで安心だけど」
「どういう意味?」
「病院にいれば、もう殴られない。だから、私は安心して眠れる」
いろんな家庭があって、いろんな親がいる。
教師をしてきて、そういうのをたくさん見てきた。
直も、同じように悩んでいた。
お姉ちゃんのことで。
「そんなにひどいのか?」
「酒乱、かな」
「いつから?」
「私が小さい頃からずっとだよ」
俺は言葉を失くした。
早く言ってくれれば良かったのに、と言おうと思ったが、言えないくらい悩んでいたんだろう。
それに、俺に言ったところで解決はできない。
そばにいてやることもできない。