三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
  もうすでに貴文は開き直った感じで
「で、紫苑はどうしたい訳?」
  と紫苑に聞いてきた。




「ど・どうしたいって、いきなりそう言われても。よりによって私の親友である千菊に子供を生ませたんだから、はっきり言って私に対するこれ以上の侮辱(ぶじょく)はないわって話よね」
  と紫苑は声を荒げて言った。




「ごめん紫苑。結果的にこうなってしまったって言うのが僕の正直な今の気持ちなんだ。決して紫苑の事を嫌いになった訳じゃない。だけど紫苑にはない千菊の内面を見ているうちに、紫苑よりも千菊の方がより好きになってしまった。ちなみに紫苑、君にはこれから先いくらでも僕以上の相手が現れるだろう。だが今まで幸せと縁遠かった千菊を今後幸せに出来る男は僕以外にはいないんだ。そう僕は思ってる。だから僕は千菊と生きてゆく事を選択したんだ。まあ、端的に言えばそう言う事なんだ」
  と貴文はこともな気にそう言い放った。




  その言葉に対して紫苑はあえて千菊に向けて
「でも千菊言っておくけれど人の旦那を横取りすれば必ずその報いは、半端なく千菊自分自身に返ってくるのよ。せいぜいその事を肝に命じておく事ね」
  と言って釘を刺した。
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