三種の神器‐戸嘴美園（こはし みその）の場合

　　すると
「ええ。父は確かに糖尿病なんかじゃなかった……」
　　と紫苑はポツリとそう答えた。




　　この時美園はハッと気づいた。おじさまは多分私と楓駕（ふうが）が付き合っている事を知っていたんだ。だから安易に自分とセフレ関係になったら、後々美園と奥さまの子供である楓駕が傷つく事を懸念して、あえておじさまは自分に対して糖尿病だからセフレ関係にはなれない。と嘘までついてくれたんだ。そのおじさまのやさしさに美園は自分と楓駕の事をどれほど大切にしてくれていたのかを思い知った。そんな美園の目からは次第に大粒の涙が溢れ出した。




「う、ううう。おじさまありがとう……」




　　急に号泣（ごうきゅう）し始めた美園を見て楓駕と紫苑それから貴文に千菊は訳が解らずただ唖然とするばかりだった。