三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
  その七乃葉の言葉を聞いて美園は
「うん。紫苑さんもそれと同じ事を言ってたわ」
  と一言言った。


  
「まあ誰だってそう思うのは当たり前な気がするけど。特に被害者側からするとそうでも思わなければ、やってられないでしょうしね……」




「うーん。だね。私も紫苑さんの立場だったら思いっきり相手を責めて悪態をついていたと思う。多分それがあの場合は自分の精神の平静を精一杯保つ手段でもあったんだとも思えるし」
  としみじみ言って美園も七乃葉の意見に同意した。




「でも紫苑さんがご主人に対してたとえば『私を捨てないで!』とか『私にはあなたしかいないの!』とか言って泣いてすがったとしたなら、また違ってたのかしら?って言うか、おそらく紫苑さんって女性(ひと)は案外そう言う事がサラリと言えない性格の人なのかもね?それに比べて愛人である女性は甘え上手と言うか、そう言う言葉がスンナリと言える女性だったからご主人も紫苑さんにはないそう言う部分に触れて、あっさりと親友の誘惑に乗ってしまったのかもね?」
  と七乃葉は補足した。
< 118 / 179 >

この作品をシェア

pagetop