三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
「だね。この前七乃葉に楓駕(ふうが)を紹介した時に、七乃葉は楓駕があまりにも庶民的な考えだったからパスって言ったんだったよね。でもさ。もし仮に私と楓駕が結婚をして楓駕が突然に変貌して、180度変わってしまったなら『逃した魚が大きかった!』なんて言って七乃葉が後悔したりしてね」
  と言って美園はさも愉快そうに笑った。




「あら私はそんな事思わないわよ。だってこう見えて私って割と気持ちの切り替えが早い方だし。って言うか、私は楓駕君よりか美園の方が180度変化すると思うなあー。だからむしろ私的には美園の変貌振りの方が興味深々だわ」
  と七乃葉は笑いながら言った。




  その七乃葉の言葉を受けて
「うーん。そうくるかあー?って待てよ。じゃあ私の方が『ごきげんようとかさようでございますか?』なんて言葉をいち早く使い出す訳だ。そして楓駕が私のその言葉を聞いて体中に蕁麻疹(じんましん)なんかこさえちゃって、『美園おまえそんな言葉なんか使うのはやめろ。俺を殺す気か?!』なんて言った日にゃ即夫婦喧嘩が勃発しちゃったりなんかして。あっは。でも良く考えてみたらそれって可笑し過ぎるよね。ちなみになんか想像するだけで面白いけどさ」
  と美園が言うと
  



「うん。うん。そんな感じ」
  とゲラ子(=笑い上戸《じょうご》)の七乃葉は大口を開けてゲラゲラと笑いながら言った。
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