三種の神器‐戸嘴美園（こはし みその）の場合

３‐千菊の不可解な心

「あっ、そう言えば楓駕（ふうが）君千菊と貴文の子供の事なんだけど、実は違う男性（ひと）との子供だったらしいわよ。なんか貴文が日増しに顔つきが自分と違ってくる子供に疑問を抱いて、こっそりＤＮＡ鑑定をして解ったらしいの。それってなんかあまりにも貴文が哀れ過ぎて拍子抜けしない？」
　　と紫苑は言った。




「えっ？！それって千菊さんが二股をかけてたって事？」
　　と楓駕は驚いて聞いた。




「うん。そうみたい。でも私的にはその事を知っても、現時点で貴文に対して『良い気味。ざまあー見ろ！』って言う感情しか湧かないわ」
　　と紫苑は冷めた感じでそう言いきった。




　　言うなればこれは貴文の安易な気の迷いが招いた、同情の余地さえない哀れな結末だが、かつて愛し合った２人の行く末をまざまざと知った楓駕は、この事を反面教師として肝に命じておこうと思った。尚、こう言う事を踏まえると、今後年を重ねて生を全うするまでに自分が学ぶべき事は、まだ山ほどあるんだなと楓駕は痛感した。