三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
「ねえ、楓駕(ふうが)君なんで女の友情ってこんなにも脆(もろ)いんだろうね。少なくとも私は千菊の事をずっと親友だって思っていたのに、千菊はそうじゃなかった。まあ、人の旦那を平気で寝取る人を勝手に親友だと思い込んでいた私も、相当間が抜けていたと言う事ではあるんだけれど」
  と紫苑はリビングのソファに座り半ばため息混じりにそう呟いた。




「うーん。俺はまだ若いと言う事もあって社会経験も浅いから、果たして女の友情の成り立ちがどう言うものなのかと言う事は、現時点では解からないや!でも一つ言える事は千菊さんにも、千菊さんなりのそうなざらるを得ない理由があったのは確かなんじゃないのかな?ちなみに友情を裏切りに差し替えても、手にしたかった何かが……」




「うーん。『友情と裏切り』か。私は迷う事なく友情を大切にしたいと思うけれど、千菊は友情よりも裏切りを選んだ。その事実の裏には何か深い理由があったのかもね?ってまあ、今となってはその事を追求したとしても、全ての関係が壊れた後では手遅れよね。でもやっぱり私的には千菊のその深い心の闇の部分を、いち早く察知出来ていたらって言う思いも少しある事は確かだわね」




「そうだね。良く解らないけど多分紫苑義姉さんと千菊さんの間には、ビミョーな心のズレがあってお互いにその事に気付けなかったのが、災いしたんじゃないのかな?」
  と楓駕は言葉を慎重に選びつつそう言った。

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