三種の神器‐戸嘴美園（こはし みその）の場合

　　間もなく運ばれて来たコーヒーを一口飲んで美園はやっとこさホッと落ち着いた。そして美園がふっと窓の外を見ると外はまだ小雨ながら雨は降り続いていた……。




　　そう言えばファミレスのバイトの面接の時もこんな雨が降っていたっけ。と、美園はその当時の頃を思い出していた。あの日はまさか午前中は雨なんか降るような天気ではなかったのに、午後になって急に雨が降り出したのだ。でもってファミレスの面接時間には最悪の土砂降りになった。でも雨に濡れたまま美園はそのファミレスの面接に臨んだ。




　　その時雨に濡れた美園を見て、『風邪をひくといけないからこのタオルで拭いて下さい』と優しくタオルを差し出してくれたのは店員である楓駕（ふうが）で、面接をしてくれたのはチーフマネージャーだった。だからそもそも楓駕とチーフマネージャーとの出会いは同じ場所。




　　でもって最初に親しくなったのは楓駕だった。その日は年度末のお店の棚卸しの日で、朝一から社員や派遣社員そしてパートにアルバイト店員達が総出で、仕事の合間合間にお店内にある食品や備品の在庫数を一つ一つ丁寧に数えては、バーコードスキャンしていた。