三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
  でも七乃葉は自分の家の裕福さを少しも自慢する事がなくて、謙虚で性格がとっても良い子だったから、私達今現在もこうして仲良くしていられるんだと思うの。もしも七乃葉が意地悪で負けん気が強い性格で、常に上から目線でしゃべるタイプの人だったなら、私達2人の友情関係はとっくに破錠してたんじゃないかな?」
  と美園は楓駕(ふうが)にそう説明した。




  その美園の説明に楓駕は
「ふーん。そうか……」
  と言って納得をした。




  ちなみに人と人との出会いは千差万別ですぐに消えてしまうものもあれば、不思議とその出会いが思いの他長く続くものがあるのも事実。尚、楓駕は七乃葉の決して気取る事のない話し方や、終始穏やかな雰囲気をかもし出す七乃葉の独特なオーラが、美園と七乃葉の二人が幼い頃から今現在まで続いている要因なのかも知れないなと思い、七乃葉に対して好感を持った。




  一方初対面である楓駕と七乃葉が和(なご)やかに話しているのを見ているうちに、何故か?美園は七乃葉に対して嫉妬心のようなものが芽生えて胸の奥がチクリと痛んだ。そしてこの時『この胸の痛みはなんなのだろう?』と美園は一瞬思ったが、やがて丁度良い具合にビールやカクテルのアルコールが体全体に染み渡り、酔いが増すうちにその思いはすぐにかき消された。
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