あの加藤とあの課長*another side
だけど、自覚したところで、俺はどうもしない。特別何をするわけでもない。


俺も加藤も節操のないタイプだからそういった噂は尽きないし、今さらどうする気もない。

結婚云々は、年を食ってからまた考えればいい。


加藤と結婚したいと思うわけじゃない。そういう辺り、俺はわりと軽い気持ちで加藤を求めているのかもしれない。


何より、俺には今適当に付き合っている女がいて、加藤は今は同期である風間と付き合っている。

お互いにそういう相手がいるんだ。


守るのは飽くまで仕事上だけ。
プライベートは、プライベートだ。



「係長、どうぞ。」



不意にコトリとデスクに置かれたマグカップに、少なからず驚いた俺は、キーボードを打ち間違えた。

ふと見上げれば、俺に負けないくらいのポーカーフェイスの加藤。



「あぁ…、ありがとう。」



なぜ、丁度コーヒーが欲しかったのが分かったんだろうか。

そう思いながらマグカップに口をつけて、緩みそうになる頬を引き締めるのに苦労した。


なぜ、俺の好みの味がピンポイントで分かるんだろうか。


疑問は募るばかりだが、そのたびにいちいち俺を喜ばせてくれるんだから、加藤は天才だ。
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