あの加藤とあの課長*another side
そんなある日、彼女がやけに疲れた顔をして出社した。

(おいおい、今日はこれからだぞ…。)


思わずそう思ってしまうくらいには、顔色が悪かったのだ。



「おはよー、陽萌。……また直人?」



最後の方は声を潜めたつもりなのだろうが、側にいた俺には生憎聞こえてしまった。

そんな今泉に苦笑して、加藤は自分のデスクに座った。



「今度は何、どうしたのさ。」

「んー…、昨日誰だかにアドレス渡されて、それを直人に見つかっちゃって…。」

「で、まさか一晩中…?」

「気付いたら空が明るかったよ…。」



オフィスに人が疎らのをいいことに、朝から繰り広げられる生々しい話。

小声だから俺くらいしか聞いていないだろうが、聞いてきて気持ちの良い話ではない。


なんせ、気になる女の話。


(………それにしても。)

風間というのはろくでもない男らしい。俺はあまりよくは知らないのだが。


相当に嫉妬深いようだが、それではいつか加藤に限界が来てしまう。

それでは、困るんだ、俺が。公私ともに。
< 12 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop