あの加藤とあの課長*another side
入社5年目、俺が27歳のとき、彼女はやってきた。



「本日より営業部に配属になりました、加藤 陽萌(かとう ひめ)です。」



第一印象は、“可愛い”だった。

それは俺だけに限らず誰もが思ったことだったろうし、別になんとも思わなかった。


透けるような白い肌に、大きな瞳。
小さな鼻に、ぷっくりとした赤い唇。

鎖骨まで伸びたサラサラのストレートの髪。


直感でモテるんだろうと思った。

だけど、所詮顔だけの女。そんな奴、世の中には腐るほどいる。



「生渕(きぶち)くん、あとは頼んだよ。」

「はい。」



係長になって2年。彼女は俺の直属の部下ということだ。



「よろしくお願いします。」



そう頭を下げた彼女は、パンツスーツを綺麗に着こなしていた。

スカートばかり穿いていそうなものを。


(案外ガードは固いのか…?)



「早速だが書類を作ってくれ。分からないところがあれば訊きに来い。」

「はい。」



指示された内容を淡々とこなし始めた彼女に少し感心した。

(使えるかもしれない…。)


分からなければしっかり訊きに来るし、何より仕事が早い。
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