あの加藤とあの課長*another side
増田どころか、今まで付き合ったどの女も家に上げるどころか、連れて行ったことすらない。

家の場所すら教えていない。

そんな家に、加藤を連れて行く。


自分で自分がどれ程本気なのか、嫌と言うほど分かってしまった。

だから、しょうがないんだと思うしかない。



「……増田。……別れてくれないか。」



酷だと、最低だと、申し訳ないと、心の底から思う。

どんな言葉で取り繕ったって、そのことに変わりはない。



「…俺は、加藤が好きだ。」



でももう、自分を抑えられそうにない。

いや、正確には、自分を抑えたくなくなった。がむしゃらに求めたくなった。


今はただ、加藤が欲しい。




「振った。欲しい子が、できた。だから、もう止めた。」



翌朝、結局朝まで起きることがなかった加藤と、俺の家で朝食を摂りながら、そう言った。


相当驚いた表情をした加藤は、正直滑稽で。

それでいて、それが自分のことだとは欠片も思っていないようで。

それが良いか悪いか、今一つ分からぬまま。


彼女の隣で過ごす休日の朝を噛み締めつつ、次にこうするときはただの上司と部下ではないことを願った。
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