あの加藤とあの課長*another side
(コイツ…。)



今まで、社員の中でそんなことを言ってきた奴はいなかった。根本的に、こんなに近くなった奴もいなかったが…。

おもむろに、着ていたジャケットを脱いだ加藤。なんて無防備なんだ。



「だからお前は…。」



思わず溜め息を吐く。



「無防備だ、って、言いたいんですか?」



パンツスーツの足を組み、テーブルに頬杖をつく。そのまま、微笑んで俺を見るもんだから、思わず、顔が強張る。

挑発的なその笑みが、急に漂い始めた色気を引き立てる。



「歓迎会に参加したことですか? その場でお酒を呑んだこと? それど、晋ちゃんを家に上げて泊めたことですか?」



そう捲し立てる彼女。

全部、分かっててやっていたのか。



「それとも、こうして課長と部屋に、2人っきりでいることですか?」



ニヤリと笑う加藤に、俺は何も言えなかった。


加藤が部屋を出ていった後1人、部屋で物思いにふけっていた。


もしかしたら加藤は、俺が思っていたよりもずっと、無防備ではないのかもしれない。

かといって、計算だとも思えないが…。


もしかしたら単純に、素なんじゃないだろうか。
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