あの加藤とあの課長*another side
「パソコン結構好きなんです。授業でも結構得意で。」



そうなのか、と感心しつつ、俺の時代にはなかった授業だなんて思っていた。



「係長、これ、お願いします。」



彼女が差し出す書類にザッと目を通すと、文句のつけようがない。



「よし。」



そう言うと、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせる。

その笑顔が純粋に可愛くて、俺はつい少し…本当にほんの少しだけど、ドキリとしてしまった。




ある日の午前中、もう少しで昼休みというとき、ケータイが鳴った。

見れば、彼女という肩書を与えた女からのメール。



『一緒にお昼食べよー♪』



呑気にしか思えないメールに、思わず大きな溜息を吐いた。


まだ昼休みじゃないんだから仕事をしろ。それにこのケータイはプライベート用じゃなくて仕事用だ。

言いたいことは山ほどあったが、何とか全てを飲みこんだ。


プライベート用のケータイのアドレスや番号は決して教えない。

後が面倒だからだ。


とそのとき、丁度昼休みの時間になった。

俺は『了解』とだけ返信して、席を立った。
< 3 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop