あの加藤とあの課長*another side
「早く中に入れ。」と言うと、なぜか反抗する加藤。

挙げ句の果てには、「一部下に対して、随分と構うんですね?」なんて挑発的なことを言う。



「お前が部下だから、言ってるんじゃない。お前だから、言ってるんだ。」



強く腕を掴んで、そのままホテルへと向かう。

誰にでもそうなのかと、思われたくないのは勿論だが、挑発に乗ってしまったのは間違いない。


加藤からキーを奪うと、彼女を部屋に押し込んで、自分も中に入る。

加藤にシャワーを浴びさせている間、煙草を吸って気を落ち着かせる。



「あの、課長。」



バスルームから出てきた加藤が、俺に声をかける。その声からは、戸惑いが滲み出ていて。



「落ち着いたか。」



そんな問いは、加藤に向けてのものか、はたまたおれ自身に向けてのものか…。


ふと加藤の方を見ると、当然のようにスッピンで。思わず、思ったことをそのまま口にしてしまったけれど。

風呂上がりというのは、どうにもそそるものがある。


そういえばと泣いていた理由を訊いてみた。

すると、罪悪感からだと答える。



「私、好きでもないのに付き合ってばかりで、でも相手の愛は伝わってきて。それが、苦しいんです。泣いたらすっきりするような気がして。」
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