あの加藤とあの課長*another side
数日後、仕事終わりに加藤を車で家まで送って行った。

最近ではこういうことも増えていた。


車を降りた加藤に、「おやすみ」だのと挨拶をしようと窓を開けた。瞬間、加藤がきょろきょろと辺りを見回す。



「どうした?」

「いえ…。」



ストーカーか何か…か?

俺も何度かされたことがあるし、恐らく加藤もそうだろう。すぐに予想はできる。



「…何かあったら言えよ。」

「はい。」



加藤がいつものように微笑むから、俺は少し安心した。




翌日、昨日の一件が気になった俺は、加藤を家まで送る気満々でいた。



「じゃあ私、ミナトさんの接待に行って、そのまま直帰します。」



鞄を持った加藤にそう言われて、やっと思い出した。

そうだ、だから今日は俺もたまにはどこかで一杯飲んで帰ろうと電車で来たんだった。


接待ってことは飲むかもしれないってことだよな?


そう気が付いて、仕事用のケータイを片手に、オフィスを出た。

3階の廊下に出て、下を見下ろしながら加藤の仕事用のケータイにかけた。


この建物は1階から4階までが吹き抜けになっているから、3階の廊下からはロビーを見下ろすことができる。
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