あの加藤とあの課長*another side
『はい、何かありましたか?』

「いや、特には。」



そう返した時丁度、ロビーに立つ加藤を見つけた。



「兄貴と一緒なら大丈夫そうだな。」



『え?』と戸惑った声を出した加藤がふと、上を見上げた。

目が合って、加藤が呆れ顔をする。



『…仕事してください。そしてこれは仕事用のケータイです。』

「じゃあプライベート用の番号とアドレス教えろよ。」

『……はぁ。今度教えますから。』



なんだこの訊き方は。中坊か、俺は。



「帰り、遅くなるなよ。」



そう言えば、加藤は呆れたように笑うもんだから、俺も釣られて笑う。



「あと、呑むなよ、兄貴がいても。」

『ヤキモチですか?』

「心配してるんだ。気を付けろよ。」



この間のことといい、酒のことといい。
自己管理能力が低すぎる。

どこか嬉しそうに笑うと、加藤は電話を切り、会社を出て行った。



(…さて。)



俺も、仕事を終わらせて帰ろう。
そして、帰り際に一杯やろう。

そう思いながら、オフィスへと戻った。
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