あの加藤とあの課長*another side
それから数日後のことだった、加藤が会社で倒れたのは。


朝から具合が悪そうなことには気付いていた。しかし、あれ以来どことなく気まずくて…。

ずっと、気付かないふりをしていた、俺のせいでもある。


昼休みに、やっと帰るように声を掛けた。なのに、「嫌です。」なんて反抗しやがる。

終いには勢いに任せて立ち上がったかと思うと、そのまま倒れてしまった。



「加藤! おい、加藤!」



会社でこんなにも焦ったのは初めてだ。

気を失った加藤を、俗に言うお姫様だっこをして、急いで救護室へと向かった。



「あらどうしたの源…って、あらその子!」

「なんでもいい、早くしろ!」



俺は加藤が心配で堪らなくて。



「貧血と風邪かしらね。大丈夫、休めば良くなるわ。」



なんて呑気に言う敏(とし)。

コイツは今や唯一の同期だ。



「目が覚めたら強制帰宅ね。」

「当たり前だ。」



今日は、確かミナトさんとのアポが入っていたはず。

丁度良い機会だと、加藤を敏に任せ、外出した。向かう先は、ミナトさんのアトリエ。



「こんにちは、ミナトさん。」

「あれ、生渕さん。」
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