あの加藤とあの課長*another side

伝えていなかった想い

月日は流れ、7月に突入した。

そんな今日は、社員旅行1日目の夜。



「羽目を外しすぎない程度に楽しんでくれ!」



そんな社長の言葉を皮切りに、どんちゃん騒ぎが始まる。


近くに座っていた敏や部長と乾杯を交わす。

いつの間にか周りは女性社員だらけだが、俺には関係ない。加藤以外の女なんて、女であって女でないようなものだ。


不意に会場が薄暗くなって、ステージに照明が当てられる。



「あ、加藤さんだね。」



隣の部長が呑気に言う。

グレーのオフショルのサマーニットに、黒のタイトミニ姿の加藤は、何人かのバックダンサーを従えながら歌と躍りを披露する。



「あらー、エロいエロい!」



なんて反対隣の敏が言う。



「やっべー、加藤さん超エロいな!」

「今フリーなんだよな、確か。」

「これはいけっかもな!」



なんて盛り上がり出す男性社員。

一曲目が終わると、まさに拍手喝采。女性社員からの評価は上々、男性社員に至っては、鼻の下を伸ばしている。


二曲目ご終わった瞬間、どこからともなくアンコールがかかった。

ステージ上の加藤がオロオロし始めたから、きっと用意していなかったんだろう。



「どうすんのかしら、あの子。」

「さぁな…。」



助けてやりたいのは山々だが、さすがにどうしてやることも出来ない。
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