あの加藤とあの課長*another side
そっと押し倒すと、陽萌と視線が交わる。



「お前は…、俺の理性を飛ばす気か。もう少し余裕ぶらせてくれよ。」



そう苦笑すると、陽萌は「足りない…。」とポツリと呟く。


あぁ、この女は。

思わず溜め息を吐く。



「溜め息吐くと、幸せ逃げるんですよ。」

「逃がしておかないと、幸せで狂いそうだ。」



そう言うと、陽萌は可笑しそうに笑った。



本当に、堪ったもんじゃない。

陽萌に溺れる男を何人も見てきたが、その理由を実感した。


そうして笑っているうち、陽萌はだんだんと夢の中へと堕ちていった。



「…陽萌? おい、陽萌!」



……嘘だろ。

お預けもいいところだ。


俺は溜め息を吐くと、陽萌からそっと離れて、煙草に火をつけた。


…これから、大変そうだ。



帰りのバスでは、他の男への牽制のため、陽萌の隣を陣取って帰った。

もう昨夜の宴会で、俺と陽萌の関係は噂になってしまった。


当の本人は、酔ってあまり覚えていないようだが。


そのくせ悪びれる様子もなく、またも笑いを零している。

ふと俺の肩に頭を乗せると、幸せそうに笑みを漏らした。
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