あの加藤とあの課長*another side
最低だが、伝を使えば他部署に飛ばすことくらい簡単なことだった。

それ相応の地位を与えて、それなりにソイツが満足するように。その後は、ソイツ次第だ。


加藤はまだ本社に来て1年だが、加藤には十分に係長補佐が務まるだけの力がある。



「本日付で係長補佐になりました、加藤 陽萌です。よろしくお願いします。」



律儀にそう挨拶したアイツは、きっと、俺が言ったことを覚えていやしない。



「俺が、お前の面倒を見てやる。最後まで、だ。」



最後まで、コイツの面倒を見る。加藤を係長補佐にすると決めたとき、そう決めた。


コイツは今後、行く先々で敵を作ることが多々あるだろうと簡単に予想がつく。

そしたら俺が、守ってやればいい。


そんな俺の決心を勿論知らない加藤は、顔を綻ばせることもなく、言った。



「ありがとうございます。」



いつから、きちんと線引きをするようになったんだ、コイツは。

加藤が本社に上がって、2度目の春の日だった。
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