あの加藤とあの課長*SS集
陽萌を知ったのは、陽萌が入社して、陽萌が店舗から戻って来てすぐのこと。

要するに、アタシと源が入社6年目、アタシが30、源が28のときだった。


可愛い子っていうのが第一印象だった。
その次は、源の狙ってる子。



『で、どうすんのよ。』

『どうもしねぇよ。世の中そんな簡単にできちゃいねぇ。』



確かに、そう言われてしまえばその通りなんだけど。

でも、好きなのにどうして動かないのか。諸突猛進型の肉食系のアタシには、理解不能だった。



『俺はもう戻る。仕事が溜まってるんだ。』

『はいよー。』



だから得意の情報網使って、徹底的に陽萌のこと調べて、源の枷も調べて。

結局、あんまりよく分からなかったけど。



『あの子、結構タラシなのね。』



当然のように救護室にやってきた源にそう言えば、ふっと微笑を漏らした。



『結構な。俺も人のことは言えねぇけど…。』

『アンタが本気にさせればいいじゃない。ん? そのくらいのやる気見せなさいよ。』

『駄目なんだよ、まだその時じゃねぇ。』

『はぁ?』

『俺はタイミングを計ってんだよ。』



とかなんとか言っちゃって、本当は逃げてるだけのくせに。

なんて思いつつも、妙に説得力あるのよね、源の言うことって。


だから、アタシは源の恋慕を、ただひたすら見守っていた。
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