あの加藤とあの課長*SS集
そんな源が動いたのは、それから3年後。

待ちくたびれたなんてもんじゃない。結論から言うと、源は大馬鹿だった。



『敏!』

『あらどうしたの源…って、あらその子!』

『なんでもいい、早くしろ!』



血相変えて救護室に飛び込んできた源。

腕の中には、顔を真っ青にして気を失った陽萌。


女子社員をお姫様抱っこする源も、あんなに取り乱した源も、初めて見た。



『どうなんだ。』

『貧血と風邪かしらね。大丈夫、休めば良くなるわ。』

『そうか…。』



その時の源と言ったら、もう永久保存ものね。

こんなに優しい顔をするんだと、あの時、思ったのを覚えてる。



それから源だけじゃなくて、陽萌と接する機会が増えた。

もちろん、アタシたちの間にはいつも源がいたけれど。


陽萌と話して、陽萌の笑顔を見ているだけで…、すごく、幸せだった。



『敏ちゃん、あのね!』



そう話してくれる陽萌を、いつの間にか、好きになってた。


だけど、アタシはオカマ。
アッキーに尽くすと決めた身。

この頑固さを、最後まで貫く。そう、決めていたのに。


いつもいつも、そういうのを平気でぶち壊すのよね、アンタって。
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