あの加藤とあの課長*SS集
『ちょおっと陽萌!』

「な、何ー…。」

『アンタ今どこにいんの!』

「え…。」

『源に電話したら来てないって言うし! 何やってんのよもうー!』

「ちょっと用事があって~…。」



あの日は源が体調を崩して、珍しく定時に切り上げた日で。


源は去ることながら、陽萌のことも気になって源に連絡を入れたら、来てないっていうから。

心配になって陽萌に電話したら、これだもの。



「加藤様、間もなく到着いたします。」



さっきから車の走行音が聞こえていたから、タクシーなんだろうと思っていたけれど。

タクシーじゃ普通、名前なんて呼ばないわよね?



『…陽萌、アンタ…今車なの? ってか、誰といんのよ。』

「ごめんっ、もう着くから! じゃあね!」

『ちょっ…、陽萌!?』



嫌な予感は的中。

使える限りの情報網全部使って、元常務と専務の行きつけの店を割り出した。


一応源にも連絡を入れて、乗り込んだタクシーは運転手に無理言ってかっ飛ばしてもらって。


頭の中は陽萌が源の彼女だとか、アタシがオカマだとか、アッキーのために尽くすとか。

そんなどうでもいいこと全部吹っ飛んでて。


ただ、陽萌の無事だけを考えてた。
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